【セミナー】

算数・数学を「自ら学ぶ力」の育て方

―甲陽学院・高槻・西大和学園―
甲陽学院中学校・高等学校 数学科教諭 溝口 貴浩先生

甲陽学院中学校・高等学校 数学科教諭
 溝口 貴浩先生

[1]学校ごとに特色ある授業

立見 本日は算数・数学を自ら学ぶ力の育て方ということでお話を進めたいと思います。最初に、3校それぞれの数学の授業と特色ある取り組みについて教えてください。

溝口 甲陽学院ではいわゆる昔ながらの数学の授業をしています。進度は速いです。公立中学の3年分を中1の1年間で終え、次に高1の内容に入っていきます。その後は比較的ゆっくりと高1の終わりまでに高2までの内容をほぼ終えます。文系の生徒はここまででほぼ受験勉強の基礎ができ、理系の生徒は高2から数学Ⅲ・Cを始めます。教科書の内容は早めに終わらせて、復習や演習をじっくりやっていきます。宿題は中学の間は多めで、プリントを配って次の授業で集めたり、小テストを行ったりしています。夏休みに問題集を渡して解かすだけではおもしろくないので、自分で問題を作ってくる宿題を出す教員もいます。勉強以外のところでは、中学と高校に数学同好会があり、数学好きな生徒が集まって、授業では扱わない問題を解いたり、数学オリンピックに参加したりという活動をしています。

 高槻では、中学の内容を中2の2学期ごろに終えます。そこから高校の内容をていねいに進めていくカリキュラムです。生徒が無理なく理解できることを第一に考え、宿題もしっかりやってもらいます。6年間というゆったりした時間のなかで先を見通したカリキュラムを用意し、中学で高校の内容を先取りしたり、時には大学の内容も入れたりしつつ、数学という教科の楽しさを伝えたいと考えています。本人がしっかり考えて、納得して、時には別解をも考えるような経験をたくさん積んでほしいです。そのほか、正多面体を自分の手で作ってみるといった実験や、ものづくりからも数学のおもしろさに触れる授業を組み立てています。

小西 西大和学園は、全教室に前・後・横と3枚の黒板があります。数学の授業でも生徒たちにできるだけチョークと黒板を使って議論してほしいという思いがあります。特に初めて習う段階は定義を学ぶ授業が多くなるので、なぜそうなるのかをしっかり考えてもらいたい。そのため教員の説明を聞くだけでなく、ペアやグループになって話し合うような授業を行っています。そうすると、自然と立ち歩いたり、黒板に書いて話し合ったりするようになります。そのほか、正八面体を自分で組み立てるなど、手を動かすアナログの良さを取り入れた授業を行っています。