髙宮 本日は3校の先生方に、世界に羽ばたこうとしている子どもたちがどんな学校で才能を開花させているのかを伺いたいと思います。3校とも生徒の自主性を尊重される校風で知られています。まずはそれぞれの学校の自由度を象徴するエピソードをお聞かせください。
本郷 東大寺学園には校則がないので、制服もなく服装の決まりもありません。昨年の職員室の風景でおもしろいと思ったのは、赤系の色に髪を染めた生徒が職員室で熱心に数学の質問をしている風景です。これはこれでいいかと思った場面でした。もう一つ紹介させていただくと、クラブや同好会の活動が大変活発です。中学生は1人で2~3兼部する生徒も多く、140%ぐらいの加入率です。多い生徒は5つぐらいの部に入っています。
同好会は顧問の先生を見つけて要件を満たすと立ち上げることができるので、3年前にはラーメン同好会ができました。ボーカロイドを楽しむグループや、鑑賞だけでなく民族音楽の楽器を制作する民族音楽同好会などもあります。一方、科学部で6年間昆虫採集に励み、今年から大学の教員になって昆虫学を教えている卒業生もいます。これは活動が将来のキャリアに生かされたケースですが、必ずしもそうでなくていいと思います。自分の好きなことをやって何かを身につけてほしいですし、そういう自由度が高い学校です。
海保 自主性という点では、灘校は創立時から自主・自由を大事にしてきました。文書化した校則もありません。校則を文書化してしまうと、教員も生徒もそれを守ることだけを考えて思考停止し、ルール通り行動することになってしまうからです。勉強はもともと自分がおもしろいと思うものに主体的に取り組むものです。ルールを作って、教員が「あれをしろ」「これをするな」という環境では、自分でおもしろいものを発見して、そこから学んでいくことができなくなります。校則ではなく、灘校生としてふさわしい行いは何かを自分で考えましょうということです。その指針になるのが「精力善用」「自他共栄」という校是です。自由な学びの場で生徒の主体性が育っていることをご覧いただけるのが5月に開催する文化祭です。教員もサポートしますが、すべての点で生徒が企画運営を行う文化祭です。校則がないなかで慣習法として守ってもらっているのが、サンダルで学校に来ないことと頭髪を染めないことです。校則があれば違反だからやめろと言えますが、校則がなければことばを尽くして説得する必要があります。時代の変化や生徒の意識の変化には柔軟に対応するつもりですが、いまだにこの慣習法は残っています。
衣川 甲陽学院には中高ともに生徒手帳があります。中高が別立地で、メリハリをつけた教育を行っているので、中学校では昔ながらの学生服を着用し、スマホをはじめ学校に不要な物は持ち込み禁止です。高校になるとそうした校則がなくなるため、高1の初めのころは休み時間になるとスマホを取り出して遊んでいますが、そのうちそれも落ち着いていきます。高校では服装のルールもなく、頭髪もピアスも自由で何の規定もありません。高校の卒業式は厳粛に執り行われ、生徒はほとんどがスーツ姿ですが、なかには着ぐるみを着たり、仮装大会のような格好で入場する生徒もいます。京大の卒業式の仮装は有名ですが、甲陽学院から京大に進学した生徒が、京大にその文化を持ち込んだという説もあります。