【特別座談会】
甲陽学院・東大寺学園・灘

「数値化できない、名門校の学び」

甲陽学院中学校・高等学校 校長 衣川 伸秀先生

甲陽学院中学校・高等学校 校長
 衣川 伸秀先生

[2]芸術、技術・家庭の本気度

髙宮 大学入試で課せられる英語、数学、国語などを主要教科と呼ぶことがありますが、3校では入試と直接関係のない音楽や美術、技術・家庭にも熱心に取り組んでいます。授業の様子を教えてください。

衣川 中学校の音楽では、変奏曲がいくつもあるグリーンスリーブスという曲をリコーダーで練習しています。3年間でどこまで吹けるかを追求する授業で、自分を磨き続けることの大切さを知ってほしいと音楽の教員は言っています。高校の美術では、創造力をテーマに世の中にまだない商品やサービス、制度、施設を考えるアイデアリレープロジェクトという授業があります。絵や写真で視覚的に表現する取り組みで、廊下に貼り出している作品を見ると、まじめなものから奇想天外なものまでおもしろいアイデアがたくさんあります。表現力、独自性、アーティストマインドを育てる教育で、イヤホンの鼻版で香りを演出するノーズホンや、釣りをしながら出社して釣った魚を帰りに渡す通勤用釣り船、ノルマを達成するまで帰ることができない自習室など、いろんなアイデアが生まれています。

本郷 本校には主要教科という用語自体がありません。何が得意になるか、好きになるかはいろいろなことをやらないとわからないわけで、中高にはそれを見つけるための6年間という意味合いがあります。今春も3名が芸術系の大学に進学していますが、音楽や美術が大好きな生徒は多いです。校内に陶芸専用の教室も窯もあり、陶芸選択者はそこで一生懸命に土をこねて作品を焼く工程を楽しむ雰囲気があります。自分の専門分野だけでなく、例えば、宇宙の話もできる、料理の話もできるという人はすてきです。生徒にはいろいろなものに関心を持ち、いろいろなことに取り組んで、是非そういう人になってもらいたいと思います。

海保 中世ヨーロッパの大学のリベラルアーツ「自由七科」には音楽が入っています。音楽に限らず芸術は「人間とは何か。」「宇宙と人間はどう関わっているのか。」という根源的な問いを追求する、学問の原点です。家庭科もSDGsなどの社会課題を扱う重要な科目です。本校では全ての教科において、質の高い授業を実践できる教員を揃えています。

髙宮 エリートを輩出するイギリスやアメリカのボーディングスクール、パブリックスクールでもパフォーミングアーツ、ビジュアルアーツは大変重視されています。芸術を通じて自分を表現する学びを大事にしているところは3校と共通するところだと感じます。