髙宮 今日は甲陽学院・東大寺学園・灘の先生方にお話を伺いながら、どのような環境が次の時代をリードする子どもたちを育んでいるのかを探っていきたいと思います。まずは各校の学校紹介からお願いします。
衣川 甲陽学院は、今年で創立107年になります。西宮市の海側に中学校、山側に高校が立地している男子校です。中高別々の立地を生かして、中学では生活面や学習面で細やかな指導を行い、高校ではすべて自由というメリハリをつけた教育を行っています。自主・自立を重んじる自由な校風のなかで生徒たちは伸び伸びと育って卒業していきます。「いい大学」をめざすのではなく、学ぶことが好きな「いい大学生」になるように育てることを大切にしています。
本郷 東大寺学園も自由な学校です。昔ながらの男子校で、自由でなければならないという伝統の下、服装や頭髪について一切のルールがありません。生徒は男子校っていいなと思って入学してきており、自由で気楽な雰囲気を気に入っています。場所は奈良県と京都府のちょうど境目です。かつては東大寺の境内にありましたが、規模の拡大に伴い、手狭になって現在の場所に移ってきた経緯があります。
海保 灘は、「灘五郷」の菊正宗酒造・白鶴酒造・櫻正宗が設立した学校です。創立顧問には講道館柔道開祖の嘉納治五郎先生を迎え、講道館柔道の理念である「精力善用」「自他共栄」を校是としました。「精力善用」とは、心身の力を最も有効に活用するという考え方で、これをキャリア教育に応用すれば、自分の得意分野を見つけて資質・能力を伸ばすところにいきつきます。「自他共栄」とは、互いに助け合い、譲り合って自他共に栄える社会を作ろうという考えで、SDGsの基本理念にも通じるものです。灘にはリーダーやエリートを育てるという教育方針はありませんが、「精力善用」「自他共栄」を実践することによって、結果として数多くの卒業生がさまざまな分野でリーダーとして活躍しています。