高槻中学校・高槻高等学校 渉外・中学入試部部長
神田 宮壱先生
広野 今、多くの私立中高で力を入れている探究的な学習は、明確な答えがないものについて考える学びです。生徒が主体的に問いを立て、フィールドワークや情報分析を通じて答えを導いていくことで問題解決力、論理的思考力、表現力を養います。最近の大学入試は、受験生の意欲や適性、探究学習を含めた活動実績などを総合的に評価する総合型選抜が増えています。中高一貫校は探究学習に充分な時間を確保し、企業や大学との連携、海外研修も活発です。こうした学びは入試だけなく、大学入学後や社会に出た後にも非常に役立つでしょう。まずは各校の探究学習についてお聞かせください。
神田 高槻では当初、探究学習をクラブ活動で行っていました。わたしは生物部の顧問をしていましたが、SSH(スーパーサイエンススクール)に指定されてすぐのころの生物部部員には、全国大会に出場したり、魚類学会で発表したりした生徒もいます。生物部は現在も大人数で活動していますが、今はクラブにとどまらず、生徒全員が課題研究に取り組むようになりました。毎年2月には課題研究のポスター発表会を実施しています。アドバイザーとして大学の先生も来てくれます。
探究活動を本格的にスタートするのは中3からです。中3は週1時間、高1と高2は週2時間の授業を確保しています。漢字の由来について研究する生徒もいれば、夏休みに同じ法人である大阪医科薬科大学に行って実験する生徒もいます。みんな非常に熱心で、校外の発表会に出場する生徒も多いです。誰かが出ると、わたしも行きたいと刺激を受け、競うように校外で発表する状況になっています。探究学習をがんばった生徒のなかには、京大や阪大に推薦入試で進学している卒業生もいます。
西村 西大和学園の探究活動は、まず中学から種をまき始めます。中1、中2、中3とそれぞれの学年で課題設定→体験→発表をセットで行います。狙いは、本物の体験と発表の経験。中1では自然体験学習として、ウミガメの産卵観察、鉱物採集、無人島体験など、いくつものラインナップのなかから希望のプランを選びます。必ず事前学習を行い、教員だけでなく卒業生もTA(ティーチングアシスタント)としてサポートに当たっています。現地では専門の方々から話を聞いて刺激を受け、事後発表は保護者の方にも見てもらいます。発表ではいろいろな質問が出るので、もっとこんなところを調べたいという探究心が養えます。中2では社会活動に関係した課題解決学習をメインで行い、中3ではそれぞれの興味に応じた課題を設定し卒業研究に取り組みます。
こうした活動を経て、高校では本格的なプログラムに入っていきます。高校では大きな柱としてSSHとAIP(アクションイノベーションプログラム)があります。AIPは起業を目標としたプログラムで、実際に生徒たちがこんな会社を作りたい、こんな社会貢献したいと考えながら、いろいろな活動をしています。SSHは平成14年の指定以来、京都大学や奈良先端科学技術大学院大学と提携して実験に参加するといった取り組みをしています。こちらも課題設定→研究→発表という流れで最先端の分野にアプローチします。そこから大学でこんな研究をしたいと思い描く生徒も少なくありません。
立山 四天王寺では、コースごとにたくさんの探究的な学びがあります。海外研修は3種類あり、夏休みや冬休みにはネイティブの講師による校内での語学研修もあります。新しくできた英数Sコースには演劇教育を取り入れました。自分たちで劇を作り上げ、中3になると英語劇に挑戦します。ほかにもコースごとに、大阪大学や京都大学、医学部医学科へのキャンパスツアーを実施したり、中3では文系向きか理系向きかなど、自分の将来について考えて学習アドバイスを受けるプログラムを導入しています。大手菓子メーカーとのアントレプレナーシッププロブラムでは、マーケティングについて学びました。ほかにも、自分たちの将来像を描けるように、さまざまな業種の保護者の方に来ていただき、お話を聞く機会があるほか、オンラインでさまざまな国の方を講師に招き、各国の文化を通じて異文化理解するプログラムを提供しています。
今年の2月には中2の生徒5名が東京大学で行われた探究プレゼンの全国大会に出場しました。「データから見る江田島(広島県)の地域活性化とその打開策」をテーマに、最終12チームの一つに選ばれ、堂々と発表してくれました。これは週1回の探究の授業での取り組みから広がったもので、生徒たちには貴重な経験になったと思います。このように様々な取り組みができるのが中高一貫校の良さだと感じます。