【特別座談会】

「学び合って、突き抜けよう」

―甲陽学院・東大寺学園・灘―
甲陽学院中学校・高等学校 校長 衣川 伸秀先生

甲陽学院中学校・高等学校 校長
 衣川 伸秀先生

[2]生徒の心をつかむ学びとは

髙宮 3校とも進学校でありながら、大学受験にとらわれず本質的な学びを追求されていると感じます。個性豊かな生徒の心をどのようにつかんで主体的な学びを引き出しているのでしょうか。

本郷 学校は勉強するところですが、大学入試のための勉強をする場所ではありません。生徒には、学びというのはおもしろい、大学や大学院でもさらに学びを深めていきたいという青年に成長してほしい。そのために学校は何をすればいいのかと考えています。「よく遊びよく学べ」ということばがあります。学びも遊びも一生懸命にということに加え、わたしたちは学びのなかにも遊びを見いだし、遊びのなかにも学びを見いだす姿勢を大事にしたい。そこが、本校が大事にしている基本的な考え方です。教員に命令するわけではないですが、知ること、発見することの喜びを追求するような授業をしなければ生徒の目は輝きません。そのために我々はどういう授業を提供していくのかということを常に考えています。数学の美しさに感心させる、理科の実験を重ねてなぜそうなるのかを考えさせるといったことを重視しているということかなと思います。

海保 教員は、生徒の主体的な学びを促すことを常に考えて授業を実践しています。単元の内容を深く掘り下げて生徒の探究心に応えたり、時に教科、科目の枠を超えて授業の幅を広げ、彼らの好奇心を刺激したりしています。それを支えているのが「担任持ち上がり制」という制度です。教員は、担当学年全クラスの授業を分担せずに受け持ちますので、授業進度や授業内容を調整する必要がなく、計画的、効率的、独創的な授業ができるのです。

衣川 学びのおもしろさを追求するなかで、生徒たちは自分で考えて、それを表現する力をつけていき、結局はそれが難関大学の受験を突破する力にもなっていると感じます。甲陽学院は戦後、今のような中高一貫校になりましたが、旧制中学の時代には高等商業学校、工業専門学校という大学のような高等教育機関を併設した時期があります。戦後、それをどうするかという際に、大学はつくらず一流の中学・高校をつくると決断をして、当時大学の学長や教授を務めていた一流の学者や旧帝国大学出身の若い先生をたくさん迎え入れた歴史があります。その結果、高度な学問をどのように中高生に教えるのかを常に考える風土と授業が定着したと思います。