髙宮 社会が大きく変わるなかで、英語教育や海外との交流にも変化があるかと思います。各校の現在の英語教育についてお聞かせください。
海保 日本の英語教育は、1999年の学習指導要領を境に「話す」「聞く」活動を重視する方向に転換しました。今では、4技能5領域の力をバランス良く伸ばすスタイルが定着しています。本校では、発信力の土台となる語彙力の増強を計画的に行いつつ、5領域の力を養っています。
衣川 英語の授業は我々の時代とは様変わりしました。本校ではネイティブの教員が単独で行う授業や、社会的な時事問題をテーマに、発表や意見交換を行って英文のエッセイにまとめるといった授業があります。中学生のうちからスピーチコンテストや文化祭での研究発表、校外でのコンテスト出場など、以前の英語教育とは違う取り組みも進んでいます。
本郷 小学校で英語が教科化されましたが、習得状況に差があると思われるので、一から始めるのが本校の英語教育の考え方です。小学校では楽しいなという思いだけを残していただきたい。好き嫌いが小学校の時点で出てきているようですが、中学では楽しい英語を始めるぞという形で進めていきたいと考えています。学習指導要領の改訂で、「聞く」「話す」の重点化が進み、教材も変化してきていますが、本校では、以前から中1から中3までのクラスを半分に分けてネイティブ教員が担当する授業があります。高1ではチームティーチングでディスカッションやプレゼンテーション、ディベートに慣れていく授業も行っています。英語教育全般では「聞く」「話す」に重点が移っていますが、本校の卒業生がどのように英語を使うかを考えると、流暢さ以上に中身が大切です。そのためには語彙・文法・構文を従来通りしっかり押さえつつ、表現力や聞く力を高めるという両方を追いかけたいと考えています。
髙宮 海外プログラムのほか、海外大学進学の状況はいかがですか。
海保 代表的なプログラムに高1夏休みのイギリス研修があります。ウインチェスターやラドリーなどのパブリックスクールの校舎でさまざまな体験をする人気のプログラムです。また、クラブ活動単位でもイギリスのパブリックスクールと交流があり、今年3月には柔道部がハロウ校を親善訪問しています。自分で短期留学に行く生徒もいます。
衣川 中3の夏休みに希望者を対象に短期の海外語学研修を実施しています。今年度はイギリスとシンガポールに行く予定で、語学の習得だけではなく、文化的な交流や体験を目的にしています。ここで刺激を受け、高校生になって短期留学に行く生徒もいます。海外大学への進学は、志望者がいない年もありますが、全体的な流れとしては増えています。それも一つの選択肢となってきており、たとえば東大との併願を考えるような生徒が多いです。そういう生徒が何人か出てきて縦のつながりが出てきたことで、OBからアドバイスをもらいながら準備を検討する生徒もいます。
本郷 中3と高1の夏休みは、日本に来ている海外の大学生とディスカッションしながら、5日間交流するプログラムを用意しています。2016年には、高2を対象にイギリスのオックスフォード大学やケンブリッジ大学の寮で現地の大学生と過ごしながら講義を受けるプログラムを始めました。東大寺学園オリジナルのプログラムで、ほとんど遊びがなく、生徒はへとへとになりますが、多くの希望者が集まります。海外大学進学はまだ人数は少ないですが、今年の卒業生のなかにはケンブリッジ大学への進学予定者がいます。現在、東大に在籍していますが、9月にはケンブリッジに移る予定です。