
広野 本を読むのが苦手な子もいるかと思います。読書についてはどのようにお考えですか。
藤岡 恥ずかしながらわたしの息子も中高時代はまったく読書をしませんでした。実際に中高生は本を読む時間がないくらい忙しいと思います。息子も国語で苦しんでいましたが、大学入試の際の共通テストでは物語の問題で満点が取れました。小さいころの読み聞かせや中学までの読書の蓄積は無駄ではなかったと感じました。お母さんやお父さんが読書好きだったり、読書はしたほうがいいと言い続けていたりしたら、大人になってからでも本を読もうかなと思ってくれると思います。
広野 最初のきっかけは、保護者の方が本を用意してあげるのがいいかもしれませんね。では、お子さんの国語力を伸ばすにはどんなことが大切だとお考えですか。
藤岡 息子は本を読まないので、ふだんからできるだけ難しい言葉で話そうと心がけていました。「わたしとあなたの考えが違うよ」というところをあえて「乖離している」と言ってみたり、正しい文法できちんと話すことも意識しました。新聞を読んで得た情報を会話のなかに入れて、できるかぎりたくさんの言葉に触れてもらうようにもしていました。話し言葉のなかで国語力がつけばいいと思いつつ、そういう会話をしました。
広野 コミュニケーションが大事なのですね。
藤岡 子どもと仲が悪くなると、何を言っても聞きません。とにかく子どもと仲が悪くならないように、特に受験期は子どもを叱りつけたり、自分の感情で怒ったりせず、子どもの思いも冷静に聞いて良好な関係を保ち続けるようにしていました。
広野 受験生を支える保護者としていちばん大事なことは何でしょうか。
藤岡 小学生は未熟です。未熟な子がとても大変なことに挑むので、この子をがんばらせるのではなく、自分も一緒にこの子と勉強しようという気持ちでした。たとえば、算数の難しい問題を一緒に解いて、同じ方向を向いて進むことを心がけてきたように思います。言葉がけも大事です。成績が伸びなくて子どもも親もしんどくなったときは、勉強以外のところをほめました。「毎日塾に行ってえらい」とか「朝起きてえらい」とか。本人のがんばりを認める言葉がけを高3の大学受験までずっとやってきました。
もう一つ具体的なサポートとしては、子どもは時間の概念が弱いので、時間配分が可視化できる表を一緒に作りました。中学入学後は自分で同じような表を作っていましたね。時間の概念を教えたのはよかったと思います。
広野 お子さんへの大事なメッセージを手紙で伝えたと伺っております。ご紹介いただけますか。
藤岡 中学で息子は野球部に入って勉強する時間がなく、成績が急下降しました。野球部でも楽しんでほしかったのですが、このまま成績が下がり続けるとまずいというところまできたので、中学の野球部を引退した日に「今は勉強もしなくてはだめ」と書いた手紙を渡しました。わたしがいちばん冷静に気持ちを伝えられるのが手紙だったのです。結果的に彼は高校では野球部には入らず、勉強すると決めて今は地方の国立大学医学部に通っています。手紙が心に届いたかどうかはわかりませんが、わたしの気持ちは伝えたかったですし、彼も受け取ってくれたのかなという思いがあります。言葉はとても大事です。感情的にわっと言うのではなく、どう伝えればこの子の心に響くか、この子の気持ちに寄り添えるかを考えて、伝えていくことが大事なのではないでしょうか。
わたしは言葉をとても大事にしながら子どもたちを育ててきました。今は2人とも家を出ましたが、 18年間しっかり自分の思いを伝えてきたと満足しています。あとはがんばって本を書いて、多くの人に自分の思いを言葉で伝えていこうと思っています。
広野 藤岡先生、ありがとうございました。