【特別座談会】
甲陽学院・東大寺学園・灘

『好き』で世界を切り拓こう

東大寺学園中・高等学校 校長 本郷 泰弘先生

東大寺学園中・高等学校 校長
 本郷 泰弘先生

[3]先生がそれぞれに創意工夫する授業

髙宮 生徒だけでなく、先生方の個性も尊重されるのが3校の共通点です。優秀な生徒たちを引きつける授業の様子を教えてください。

衣川 どういう授業をするかは、教員それぞれの裁量に任せています。たとえば中学校の英語教員は、日本の大学に来ている留学生を招いて交流する課外授業をしています。SNSに偏見や差別があふれる今の時代にこそ、人と対面して会話をし、自分が持つ偏見から自由になる機会を持とうと、こうした授業をしているそうです。中学校の音楽ではリコーダーで「グリーンスリーブス」という14の変奏曲がある曲に取り組み、中学3年間でどこまで吹けるようになるかを追求する授業をしています。中学校の校舎を歩くと、朝や休み時間に生徒が練習するリコーダーの音がよく聞こえてきます。担当の教員からは、練習をがんばれば難しいことでもできるようになる自分を発見し、磨き続けることの大切さを知ってもらう授業だと聞きました。

本郷 3校ともそうだと思いますが、おもしろくない授業を受けると生徒の目は死んでしまいます。死んだ目を見るのは嫌だというのが我々教員の思いであって、おもしろいと思わせてやるという気概で準備をして授業に挑んでいます。中身は各教員に全部任せているのでさまざまですが、伝統的なことでいうと、たとえば中1の国語では週1時間「読書」の授業があります。50年以上続いているもので、内容は教員によっていろいろですが、本が大好きになるきっかけになる授業で、評価をしないところもいいと思っています。また、理科好きな生徒が多いので、中学の間の理科は週3回、年150時間前後の授業の3分の1を実験に当てています。その理科教員の半分は卒業生です。中学時の理科が楽しくてそれを後輩たちにも味わってほしいと戻ってくるのです。理科系の研究者になっていく生徒が多いのも特徴の一つです。昨今は探究学習が注目されていますが、日頃の学習が楽しい、深いということが大事なんだろうと思っています。

海保 本校も授業は各教員の裁量で自由にやっています。教員同士の関係は良い意味での競争関係になっています。ただ、学年のクラスが多くなってしまうと持ち時間の制約で独創性に富んだ授業はできなくなるので、1学年4クラスを守っています。大規模校では一つの教科を分担して複数教員で担当しますが、そうすると定期考査のために授業内容や進度のすり合わせが必要になり、工夫の余地が少なくなってしまいます。本校ではクラスの人数が多くなっても1学年4クラスを死守しているのは、創意工夫に満ちた効率的な授業を実践するためです。

 独創的な授業実践には外部の力を借りることもあります。特に社会系の授業では、社会課題に取り組んでいる NPO の方々を授業に招いたりしています。先日は公民の授業の中で女性の生理について看護師の方に講義していただき、近隣の女子大から13人ほどの学生さんに来ていただいて議論をする授業を行っていました。