【特別座談会】
甲陽学院・東大寺学園・灘

『好き』で世界を切り拓こう

灘中学校・灘高等学校 校長 海保 雅一先生

灘中学校・灘高等学校 校長
 海保 雅一先生

[4]新しいテクノロジーとの向き合い方

髙宮 新しいテクノロジーとの向き合い方についてもお考えを聞かせてください。子どもたちが当たり前のように生成 AI を使う時代に入ってきました。どんなことに気をつければいいのでしょうか。

本郷 コロナ禍を経て、1人1台のタブレットやWi-Fi 環境、電子黒板機能付きプロジェクターなどのICT環境は整っていますが、どう使うかは教員に任せています。先日何かの記事で、教育先進国のスウェーデンやアメリカでは脱デジタル化、紙と鉛筆に回帰する現象が起きていると読みました。ICTによって学力が上がるというエビデンスが得られておらず、むしろ健康を害するところもあるので使わない小学校が出てきていると読んで、なるほどと思いました。文章を読んで紙に鉛筆で文字を書いていくのは、やはり脳を動かす非常に有効なアクトだと思います。全部元に戻したらいいというわけではなく、学校はデジタルとアナログのいいところをハイブリッドの形で探っていくのがいいのではないかと思っているところです。

海保 ICT 活用に関しては、本校もWi-Fi がすでに生徒たちの活動のインフラになってしまいました。情報端末の使用制限が、職員会議でも議題に上がりましたが、今さら Wi-Fi を制限できないという結論に至りました。生成 AI の影響も非常に大きいですね。インターネットの出現や検索システムの登場は社会に大きな影響を与えましたが、言語を操る生成AIの社会へのインパクトは甚大なものになるでしょう。一方で、論理的に文章を構成する力や読み取る力は、一層重要になってくるでしょう。論理的に話をしたり、書いたりする力はかえって大事になるのではないかと思っています。

衣川 デジタルネイティブである生徒たちのほうが我々よりテクノロジーとの付き合い方をよくわかっているのかもしれないですね。先日、高3の物理部の生徒が神経科学を活用するコンテストで賞をもらったので話を聞きましたが、その発想になかなかついていけず、生徒のほうがずいぶん先を行っていると感じました。そのときに、君たちが慣れ親しんでいるテクノロジーからすると、学校の授業は遅れていると感じないかと尋ねると、意外なことに「ぼくは学校でノートにびっしり自分で書き込んで勉強するスタイルが非常にいいと思います」という答えが返ってきてうれしくなりました。確かに AI をはじめとするデジタルツールは急速に進化し非常に有用な道具になっていますが、自分で考える力を自分の外のツールに外注するのは危険です。テクノロジーを使って可能なことと、テクノロジーにさせていいことは違うと思うので、我々は何を手放さないのかを考えていくことが大切だと思っています。