髙宮 長い伝統を誇る3校には、学校生活のなかにリーダーシップを養う仕掛けが根付いています。男子校でのリーダーシップの育て方と男子の良さの引き出し方についてお聞かせください。
本郷 男子校では、女子とのコミュニケーションを図りながら、さまざまな活動に取り組むことができません。しかし、中高生時代という一時期についてはそれでもいいのではないかと思っています。その分、伸び伸びと、好きなことをやり続けられる良さがあり、男子が集団でいろいろなことを協力して決めていくことができます。男子中高一貫校には、切磋琢磨し、共に働くなかでリーダーになり得る人へ成長してほしいという狙いがあります。5年間、先輩をロールモデルとして見続けるなかで「あんな先輩みたいになりたい」という良さ、同学年と自主的に学校行事にかかわっていく良さ。たとえば、文化祭なら彼らは1年間かけて先輩より良い文化祭を作ってやると燃えまくって過ごします。そういうなかでさまざまなスキルを身につけていくのが男子校の良いところだと思います。
海保 灘が男子校なのは単に旧制中学の生徒募集方法をそのまま引き継いでいるからです。東大進学者数上位校がほとんど別学校であることからわかりますが、別学校の教育にある種の効率の良さがあるのは間違いないでしょう。しかし、効率の良さを教育の良さと捉えていいのかは疑問です。むしろ男女が同席することで生じるさまざまな問題を回避することにより、共学校では体験できることを別学校では体験できない、という自覚を持って、その弱点を補う教育しなければならないでしょう。本校では公民科の教員が、女性の講師を招いたり女子大生をゲストに迎えたりして、包括的な性に関する授業を行っていますが、根底にはこのような問題意識があります。
衣川 甲陽学院に最初に来たときは男子ばかりで正直異様に感じました。多様とは正反対の同質の世界という印象を持ちました。しかし、それは見た目のことで、男子のなかにも当然多様性が生まれ育ちます。つまり、中高6年間で自分の好きなことや嫌いなことがはっきりして、好きなことを追求していくようになります。そうすると、同質と思われた男子だけの集団がそれぞれの世界に夢中になる多様性のある集団になり、自分の知らない世界をよく知る友人にリスペクトをし合う関係になっていく。自立とともに共生する集団ができあがっていきます。これが共学とは違う多様性ではないかと思いますし、男子校のエネルギーはこんなところから生まれるのではないかと実感しています。
髙宮 名門校の教育の在り方がよくわかりました。先生方、本日は貴重なお話をありがとうございました。