【特別座談会】

「学び合って、突き抜けよう」

―甲陽学院・東大寺学園・灘―
灘中学校・灘高等学校 校長 海保 雅一先生

灘中学校・灘高等学校 校長
 海保 雅一先生

[4]工夫を凝らす情報教育

髙宮 もう一つ、世の中の大きな変化の一つに「情報化」というキーワードがあります。SNSなどで簡単に情報をやりとりできるなかで、学校現場でもご苦労があるかと思います。情報リテラシーについてはどんな教育をされていますか。

衣川 スマートフォンは高校になれば自由ですが、中学では禁止です。生徒たちは生まれたときから情報機器に親しんでいるので、できることは何でもやってしまいますし、やってはいけないことまでやってしまう場合もあります。集会で専門家を講師に招いて情報モラルを教える教育や、中学の技術家庭や高校の情報の授業の中でリテラシー教育を行っているところです。

本郷 携帯電話は授業が始まる前にかばんの中に入れるルールです。SNSやネットでのトラブルは100%起こると考えていて、入学時に注意をしたり、トラブルに詳しい卒業生の弁護士に来てもらって研修会を行ったり、授業でも中1の技術分野で情報の使い方を学習しています。生成AIを使って課題の英作文を書いてきた生徒がいましたが、最終目標は何のためなのか、ということを伝えました。一方で、ICT機器を使うことで、さらに学習内容を深められる可能性があります。今年から中学ではより興味深く英語に触れられるように、英語アプリを使い始めました。

海保 文科省のギガスクール構想の下で、本校でもICT環境の整備は進んでいます。同時に、SNS上でのトラブル防止等のためのリテラシー教育が必須となり、「技術分野」の授業や講師を呼んでの講演会等で、生徒の情報モラル向上に努めています。生徒会にデジタル委員会という組織が発足したり、生徒会の中央委員選挙を電子投票で実施するなど、生徒たちは校内のICT環境を積極的に活用しています。

髙宮 2025年度からは大学入学共通テストに「情報Ⅰ」が追加されます。どのような対策をされていますか。

衣川 高3で週2時間の授業を行っています。それに先立って高2の夏休みに補習を行い、高3になるまでに自分でできるところを進めておくように指導しています。さらに、夏休みや冬休みに必要に応じて補習を実施するなど、様子を見ながら進めているところです。

本郷 高1と高3で、共通テストに向けた授業を行っています。今後、大学入試においてどういう扱いになるのかを見守りながら、変更も含めて考えていきます。

海保 中学では技術家庭分野で「情報」を扱う授業がありますし、 高1、高2で質、量ともに十分な授業を行っていますが、やはり初めての共通テストということで生徒は不安を持っているため、高3の夏に補習を実施したり、土曜講座で情報の講座を設けたりするなど、共通テスト対策をしたいと考えています。