SAPIX YOZEMI GROUP 共同代表
髙宮 敏郎氏
髙宮 各校の卒業生は、社会でどんな活躍をされているのでしょうか。若手の卒業生に関するエピソードを教えてください。
衣川 マネーフォワードの辻庸介さんが講演会で言われたのは、目の前のことをがんばるのが大切だということでした。試験勉強、クラブ、行事、今あることを一生懸命がんばるところから自分の学びが始まっていくと話されたのが印象的でした。毎年中学校で1回、高校では2回、卒業生を招いていろいろな話を聞かせてもらっていますが、最近ではJAXAと東大で宇宙工学を研究している人や、サンゴ礁を都会のなかに移送してアクアリウムを再現する会社を起業した人に話をしてもらいました。
本郷 今21歳の卒業生ですが、高1の時に児童書を子どもたちに紹介するフリーペーパーを創刊して全国数十カ所で配布する活動を始めました。後に仲間数人を伴って読書文化振興NPOを設立。より良い読書体験を通して子どもたちが自立することを目標に活動し、いろいろな賞をもらいました。もの静かな印象の生徒でしたが、どんどん成長を遂げて外に出ていくようになり、東大の文科三類に進学した後はカリフォルニア大学バークリー校に入学してさまざまな教育プログラムを発信するなど、世の中を良くするのは教育であるというところに視点を置いて活動しています。今後に期待したい卒業生です。
海保 「精力善用」:自分の心身の力を最有効活用する、「自他共栄」:互いに助け合い譲り合って自他共に栄える社会を建設する、が灘校の校是ですが、これを卒業後も実践して活躍している卒業生が数多くいます。髙島崚輔芦屋市長もその一人です。彼は自分が暮らす地域の課題に直面し、自他共栄社会実現のために自分の資質をどう有効活用すべきか考えて、政治の世界に飛び込んだのでしょう。まさに「精力善用」「自他共栄」を体現していると思います。
髙宮 数値化できないものこそが名門校の教育であるとわかりました。先生方、本日はありがとうございました。