【セミナー】

医師への道は中学校選びから

−大阪星光学院・四天王寺・高槻−

[1]医学・医療への関心を育む環境

広野 SAPIXが行う卒業生アンケートでは、女子は例年医学系志望が最上位で、男子も理工学系に次いで医学系志望が多いという結果が見られます。現在、全国には82の国公私立の医学部がありますが、偏差値が高く入試が難しいことに加えて、面接や小論文が課されることも多いため非常に難関です。学力は大事ですが、まずは、なぜ医師になりたいのか、医師とはどういう職業なのか、どういうマインドが必要なのかが大事だと感じます。3校ではどのように医学や医療への関心を育んでいるのでしょうか。

岡澤 大阪星光学院では、「ほしゼミ土曜講座」と題したプログラムのなかで、医療系をテーマにした講座を開講しています。OBの医師を招いて講演会やワークショップを行っています。災害医療に携わっている医師のワークショップを体験してその道を志し、医学部に進学した生徒もいます。講演会にもさまざまなOBが講師として来てくれるので、医療に関する知識を得て、より関心を高める機会になっています。
 高1の秋には全員で京大キャンパスツアーに参加します。文系・理系の選択を控えた時期に、実際に大学を訪れる行事で、京大で教員をしているOBや大学生・大学院生のOBに進路や学生生活の話を聞きます。すべての学部にOBがいますので、医学部を希望する生徒は医学部生と交流。研究室に所属するOBの医師に研究室を見学させてもらうこともあります。こうした取り組みを通じて、より医学への関心を高めています。

大野 四天王寺では、大学の医学部ツアーを実施しています。コロナ禍以前は中3で京都大学、高1で大阪公立大学、高2で大阪大学と近畿大学を訪問していました。それぞれの大学にOGがたくさんいるので、身近な先輩に案内してもらって医療の心構えを身につけていきます。コロナ禍でリモートになったこともありましたが、昨年からようやく大阪大学の医学部ツアーを再開できました。また、中3生は学校のすぐ向かいにある四天王寺病院を見学。施設見学のほか、医療体験をしたり、医師、看護師、薬剤師の方の講演を受けたりしています。
 医学部、医師をめざす医志コースでは、SDGsをテーマにした探究授業を実施しています。これは研究と発表を通じて医療を志すための考え方を身につけていく取り組みで、中2でのビブリオトークや、高1・2でのプレゼンテーション大会もその一環。医志コースの生徒は何事にも積極的で、こうした行事でも活躍しています。校外での活動も活発で、いろいろな大会に出て賞を受賞しています。最近では、「SDGs QUEST」という大会で賞をいただきました。こうした活動を通じて、医療従事者をめざすための心構えを見いだす教育を行っています。

神田 高槻は、大阪医科薬科大学が経営母体なので、大学と連携した医学体験を行っています。たとえば、高1の「医学部実習」では、聴診器を当てる体験や大学の先生の講義を受講。高2では生物の課題研究をしている生徒が大学の研究室で高度な実験を教えてもらいます。中2では全員を対象に「最先端医学教室」を開き、大学の先生の模擬講義を受講しています。また、高1・2では、年に8回の「基礎医学講座」を実施。医大の先生が本校にいらして、法医学や解剖学、生理学、微生物学など、基礎医学の授業をするもので、毎年100人以上の受講生がいます。「サマーサイエンスプログラム」では、高1の課題研究で化学をテーマにしている生徒が薬学部に行って実験を教えてもらいます。
 そのほか、山間部の医療体験をする「地域医療体験」や、薬学部の先生による年5回の模擬講義「基礎薬学講座」、産婦人科の先生による「思春期教室」など、さまざまな取り組みを実施。SSHの活動の一環で、理系女子を増やすための「医系女子向け座談会」では、医学や看護の分野で活躍している人の話を聞かせてもらっています。さらに、現役医師による講演も開催。第一線で活躍している本校OBの医師や医学研究者を招いています。