<特別講演>

遊ぶように学ぼう
大学行くのは何のため?

[3]大学や大学院での学びと研究

 最後に、大学・大学院での勉強や研究は個人のキャリアにも社会にも非常に役立つということをお話しします。実は、日本の大学で修士・博士まで進んでも、就職先はあまりありません。人口比率で見ると、日本の博士はイギリスやドイツの半分ぐらい。博士になっても年収が上がらないからです。日本の学位を取った人の約7割は大学に勤め、残りの約2割が企業に就職しています。アメリカでは博士を取った人の約4割が大学で研究し、大半は一般企業にいます。それがイノベーションにもつながっている。この差は大きいと思います。
 では、何のために大学・大学院に行くのか。学問はもちろん、論理的に考えたり、困難をいかに打開したりといったいろいろなスキルが鍛えられます。儲けを考える必要がないので、会社ではできない研究もできます。だからこそ大学は大事で、そのために入る努力をしたほうがいい。わたしの研究室には7か国の院生がいて、好きなことを究めながら、常にいろんな分野のことを話し合っています。無駄なことは何もないのです。
 ただ、好きなことだけをやって遊んでいればいいわけではありません。やはり基礎的な知識や教養は大事で、そこを忘れてはならないと思います。好きなことをするためなら苦手なことも何とかしようと思えます。そうやって学べるのが大学のいいところです。